前回の続き3~4日目
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3日目
朝起きて、トラップの回収を兼ねて各地を回る。
青いののポイントでゴトウヒラタのオスがトラップの中に絡まっていた。今更遅い。青いのは追加が無かった。
ゴトウヒラタが採れたポイントではアカメガシワの根元に置いたトラップの山にマイマイカブリが付いていた。メスで噂に聞いた福江のマイマイらしいサイズだった。
トラップの帰りに興味深い名前の山があったので記念に寄ってみることに。
山道を走って何気なく脇道に突っ込んでみると行き止まりだったが、道を横断するように黒くて大きいのが早足で歩いていた。弟子が捕まえたところオオオサムシだった。マイマイと同じように本土の個体群より大きいらしい。
この山は期待できそうだったので明日で最終日ではあるが弟子はコップを仕掛けることにした。
弟子がコップを仕掛けている間は暇だったので散歩していたらマムシを発見した。日中で遭遇するのは珍しいのではないだろうか。

コップを仕掛けた終わった頃には昼前くらいになった。
島に来た記念で刺身を食べようと良さげな店を調べて行ったところ生憎休業していたので近くの定食屋へ行くこととなった。ちゃんぽんを頼むと本土のチェーン店が霞むくらいに美味しく本場の味を感じた。

食後は弟子の提案で福江島の生き物や島の成り立ちが展示されている博物館の様な所へ向かった。
カブトやミヤマなど採りたかった標本が展示されていて興味深い施設だった。
やはり福江島のカブトは前胸の丸みなど独特な感じがした。チナミニィ、対馬のカブトは前胸はハの形で頭角が長めだった気がする。
展示によると福江島は何度か噴火しているらしい。おそらくかつては固有種がいたのかもしれないが噴火でリセットされて、その後九州と繋がった際に渡ってきた生き物が繫栄しているのだろう。
福江島の所々に険しい山があったが火山活動の名残だと思われる。
天候に恵まれて展望台からの眺めも良く、ここに来てやっと「島」を感じた。

その後は虫の標本ラベルに書かれていたポイントへ行ってみたけれども虫の痕跡が見つからず、近くの海で黒いナマコを捕まえて遊んだり、諦め悪くイシガメを探しに田んぼを彷徨っていたら夜になってしまった。

夜になってからはまたイモリを探しに例の場所へ向かった。
前日よりも広い範囲で探し回っていると何匹か発見できた。あるブログに載っていたエグイ色ぽい個体も採ることができた。
今回は多く採れたので飼える分だけキープして残りはリリースした。
ブリードしてぜひとも当店オリジナル血統を作出したい。
イモリに満足したら最後の虫探し。
昼に行った海沿いのポイントに行くとアカテガニの楽園になっていた。内陸生まれの私にとってアカテガニは買わないと入手できない遠い存在だったので新鮮な光景だった。
近くの樹液が出ている木を見て回っても虫の痕跡が無い。虫はこのカニ達に連行されているのではないだろうか?
海沿いに外灯が並んでいたので弟子が見に行ったところ、偶然いたノコ♀を踏んでしまったようでその亡骸を持ってきた。このポイントで唯一見られた貴重なクワガタであった。
最後に霧の濃い謎の場所へ向かった。再びブナ科植物エリアへ行くとノコやレクタスは普通に見られ、小さいがゴトウヒラタのオス×2も見つけることができた。
ここまでしてゴトウヒラタのメスもカブトムシも見られなかったことから完全に時期が早かったという結論に達した。
あの展示されていた標本には島に行った日と同じくらいの月日に採集されたものもあったがこの年は発生が遅れていたのだろう。
梅雨真っ只中だったが雨の降りがまばらで旅の期間中は全く雨が降らなかったことも要因しているのだろうか。といっても本土に帰った頃に雨が再開したので旅行としての運は良かったようだ。
目的の虫は見つけられなかったが連日の疲れが溜まってきたので早めにホテルに帰ることにした。3日目はこれで終了。

4日目
ホテルをチェックアウトして弟子が仕掛けたコップを回収しに山へ向かった。オオオサムシを何匹か回収することができた。もっと早くに仕掛けておけたらと悔やまれる。
それからお土産を買ってからレンタカーを返却し昼頃には空港へ、天候は問題なく無事に羽田へ戻れたが駐車場のどこに車を止めたか忘れてしまい少々彷徨ってしまった。車を発見して帰るも夕方の渋滞に巻き込まれ夜になってやっと帰宅することができた。

人生で最初で最後の福江島になるかもしれないが全く観光せず採集に励んだことに後悔はない。
フクエアオカナブンとイモリといった成果が得られたがゴトウヒラタのメス、ミヤマ、カブトムシ、生きたイシガメが見つけられなかったのは心残りではあった。
とはいっても今回の旅はパイオニアの痕跡が無くトラップを回収して撤収する頃にやっと同業者らしき者達を見かけただけで好き勝手やれたのは幸運だった。
その後 フクエアオカナブンの産卵セット
まず、フクエアオカナブンの雌雄判別について
今までカナブン系は前脚のトゲで雌雄を判別できると思っていたがアオカナブンは例外だったようだ。
本種は腹の凹みで判別可能で運良く3ペアに分かれた。
1ペアは弟子に託して、2ペアをブリードした。
旅の疲れを癒やすために数日餌を食わせてから産卵セットを組む。
これ系のカナブンは寿命が驚くほど短い。
卵がマットの色と同化して産んでいるのか分からない為、セットを複数用意してしばらく経ったら次のセットへ移していった。
セット後2か月後には全て果ててしまったが60匹以上幼虫が採れたのでブリードは成功ということで。
また美しい青い姿が拝めること楽しみにしている。